徳島県で信号無視をした女子高生が車に轢かれて亡くなった事件で運転者側に無罪判決。徳島地裁。

投稿者: | 2020年1月23日

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自動車対赤信号無視をした自転車による死亡事故の判決がニュースになっていました。

2018年8月、松茂町中喜来の国道を自転車で横断していた女子高校生=当時(15)=をはねて死亡させたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死)罪に問われた徳島市徳島町、会社社長の男性(49)の判決公判が22日、徳島地裁であった。佐藤洋介裁判官は「過失は認められない」として、無罪(求刑罰金30万円)を言い渡した。

判決理由で佐藤裁判官は、自転車が赤信号で進行したことに触れ「(車の運転中は)自転車が赤信号に従って横断を差し控えると期待、信頼するのが通常だ」と指摘した。

前方不注意による注意義務違反との検察側の主張に対しては「まっすぐ前を向いた状態で自転車は視界に入らない。反射板の光を直ちに識別するのは容易ではなく、自転車の存在を予見できたか疑いが残る」と退けた。その上で「(今回の事故は)誰も悪くなかった」と述べた。
徳島新聞

信頼の原則

判決理由として「自転車が赤に従って横断を差し控えるものと期待、信頼するのが通常」と裁判官が述べていますが、法理論のひとつに「信頼の原則」というものがあります。

行為者は,他者が適切な行動に出ることを信頼して行動してよく,他者の予想外の不適切な行動によって生じた法益侵害については,その行為者は過失責任を問われない,とする法理。
コトバンク

これが信号の無い見通しの悪い交差点などであれば運転者側に注意義務が生じますが、信号機でルールが整備された場所においてルールを無視して動くことまで予見して運転しろというのは流石に酷です。
当事件の判決においてはこの信頼の原則が適用され、自動車を運転していた男性の過失は問わなかったということでしょう。

検察側も自動車側の過失は少ないと判断している?

自動車運転過失致死傷の法定刑は7年以下の懲役・禁固または100万円以下の罰金です。
検察はその範囲の中で妥当だと思われる刑を求刑できるわけですが、記事本文に「求刑は罰金30万円だった」とあるように検察側も男性側の過失が少ないことをわかっている様子。

無罪になった男性は道義的責任を感じている

無罪となった男性は判決に安堵する一方、「私の車で相手が亡くなったのは事実。真摯に受け止めており、道義的責任を感じる」と語り、「運転するのが怖くなった」とも話しているようです。
例え罪に問われないとしても、人が亡くなっているのでこの反応は正常だと思います。

誰も悪くなかった

事故当時者のどちらに責任があるのかを追求してしまうと「自動車側が無罪、つまり信号無視をした女子高生の自己責任」という結論になりがち。
ネット上で本ニュースに関するコメントを見ているとわりと辛口の意見も多数見られます。
しかしルールを守らなかったこと(信号無視)が原因とはいえ死人に鞭を打つような言動は避けたいところです。

裁判官は「(今回の事故は)誰も悪くなかった」と述べていますが、亡くなった方や遺族に対する配慮が感じられます。