大阪府摂津市、2年前に事務ミスで還付金を1500万円多く支払ったことに気付いて返還請求。

投稿者: | 2020年5月26日

大阪府摂津市が住民税の「配当割額及び株式等譲渡所得割額」の還付金を振り込んだところ、還付金の額の桁を間違えていた模様。

大阪府摂津市が事務的ミスで、60代の男性に対し住民税約1500万円を過大に還付していたことが関係者への取材で明らかになった。男性は「還付金は既に借金返済や株取引の損失補塡(ほてん)に充ててしまったので返還できない」と説明している。市側は返還を求めて法的手段に訴える意向を示しているが、男性の代理人弁護士は「返納請求を受けた時点で使い切っていたので、返還義務はない」と主張している。Yahooニュース

還付金を振り込んだのは2018年7月

大阪府摂津市は2018年7月、1667万5577円を振り込みましたが、本来の還付金の額が165万5577円だったことが発覚し、返還を求めました。
しかし還付金を支払ってから2年近くも経過しており、還付を受けた男性は受け取った1600万円ものお金を借金返済などに充て使い切ってしまったそうです。

民法の不当利得にあたる

このようなケースは民法で定められている「不当利得」に該当するようです。
⇒wikipedia:不当利得

不当利得の返還義務については民法703条に条文があります。

善意の受益者は、その利益の存する限度(現存利益の範囲)において、これを返還する義務を負う(703条)

その利益の存する限度、つまり摂津市から「還付金の金額を間違えてたから超過分を返してくれ」と言われた時点で手元に残っていた金額を返せばよい、ということになります。
よって、男性の代理人弁護士のコメントの通り「返還請求を受けた時点で使い切っていた」のであれば返還義務は無いことになります。

ただ、還付金はすべて現金ですから「還付金を使い切った」ことをどうやって証明するのだろう?と疑問もあります。
例えば2018年7月時点で1000万円を持っていて、そこに還付金の1650万円が加わると2650万円になります。
2020年までに1700万円を消費して手持ちが950万円となったとき、消費した1700万円全額が還付金だという主張は果たして可能なのでしょうか。

そもそも善意が認められるのか

返還義務が現存利益に限定されるのは受益者が善意の場合。
つまり1650万円余りの還付金を受け取った男性が摂津市の事務的ミスとは知らずに還付金を受け取っていた場合です。
「1650万円は多すぎるので何かの間違いだ」と気付いていたならば全額返還しなければなりません。
住民税の還付金の額が10倍も違っていて何も違和感を覚えない、なんてことがあるのか少し不思議ですね。